story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 71
牝馬初の春秋マイルGⅠ制覇
ノースフライトの華麗な飛行
2022年4月号掲載掲載
距離を変えての
サクラバクシンオーとの二連戦
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その後ノースフライトは放牧に出て休養する。秋の目標はマイルチャンピオンシップ。そのステップレースとして選ばれたのは10月の芝1400㍍戦スワンステークスだった。ノースフライトはそれまで1400㍍戦を走ったことがない。ここには前年のスプリンターズステークスの覇者サクラバクシンオーが出走してきて1番人気。ノースフライトは2番人気と、スプリント王対マイル女王の対決にファンは沸いた。
レースではサクラバクシンオーが2番手につけ1分19秒9のレコードで駆け抜ける。ノースフライトは中団でおっつけ気味の競馬。4コーナーで少し包まれるような展開になり、直線だけでよく追い上げたが、1馬身4分の1及ばなかった。
そして11月20日、最後のレース、マイルチャンピオンシップを迎える。距離が200㍍延びれば主役は交替だ。ファンの気持ちは一つになってノースフライトがサクラバクシンオーを抑え、1・7倍の圧倒的1番人気に推された。
フジワンマンクロスがハナを切ってレースが始まった。サクラバクシンオーは3番手。ノースフライトはそれを見る形で5番手と先行。先に動いたのはやはりバクシンオー。4コーナー手前で先頭に並びかけていった。ノースフライトもそれを追う。直線に向いて先頭を行くバクシンオーに残り300㍍でノースフライトが追いつき、差し返そうとするバクシンオーと追いくらべ、追い抜く。ゴールでは決定的な1馬身2分の1差をつけてノースフライトが勝ち、引退の花道を飾った。タイムはコースレコードの1分33秒0。同じ年に春秋のマイルGⅠを制したのはニホンピロウイナー以来2頭目である。
こうして11戦8勝2着2回というほぼパーフェクトな戦績を残して、あっさりとノースフライトは北海道の故郷、大北牧場へ帰っていった。マイル戦だけに限れば5戦全勝、うちGⅠ2勝という成績は、一年半という競走生活の短さを思うと驚異的な記録である。しかし加藤敬二調教師はあるインタビューで次のように語っている。
「これがノースフライトにとって最高潮、という思いでレースを使ったことはなかったんです。……この馬は、もっともっとよくなってくるのでは、という思いが常にありました。素晴らしい成績を残してくれましたが、完成したという気はしなかったんです」
いったいほんとうはどれだけ強かったのか、あるいは強くなれたのか。もう少し先まで、あの天才少女の行く末を見たかったと思うのは、欲張りな夢だろうか。
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ノースフライト NORTH FLIGHT
1990年4月12日生 牝 鹿毛
- 父
- トニービン
- 母
- シャダイフライト(父ヒッティングアウェー)
- 馬主
- (有)大北牧場
- 調教師
- 加藤敬二(栗東)
- 生産牧場
- 大北牧場
- 通算成績
- 11戦8勝
- 総収得賞金
- 4億5809万4000円
- 主な勝ち鞍
- 94マイルチャンピオンシップ(GⅠ)/94安田記念(GⅠ)/94マイラーズC(GⅡ)/ 94京都牝馬特別(GⅢ)/93阪神牝馬特別(GⅢ)/93府中牝馬S(GⅢ)
- JRA賞受賞歴
- 94JRA賞最優秀4歳以上牝馬
2022年4月号掲載