story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 70
地方所属馬初のJRAGⅠ制覇
メイセイオペラに注ぎし喝采
2022年3月号掲載掲載
強力なライバルを相手に
地元でこだました大歓声
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98年1月、明け4歳のメイセイオペラは、川崎記念に挑戦。先行して4着という結果は健闘と言える。しかし菅原騎手は、勝った船橋のアブクマポーロの強さにショックを受けた。これほど凄い馬がいるとは……。
岩手競馬が冬のオフシーズンに入ると、メイセイオペラは福島県のテンコー・トレーニングセンターへ向かった。歴戦の疲れが癒えると、坂路調教に精を出した。当時、坂路で鍛えられる地方馬はほとんどいなかった。
春、水沢競馬場に帰ってきたメイセイオペラを見て、菅原騎手は驚いた。トモに筋肉がついて、体全体もひとまわり大きくなり「これほど成長する馬は珍しいぞ」と思った。
柴田厩務員も、「馬ってこんなに変わるんだな」と目を見張った。肩まわりの筋肉といい、お尻まわりの筋肉といい、別馬のようにたくましく進化している。
5月のシアンモア記念(水沢)で演じた6馬身差の圧勝劇も、菅原騎手を驚かせた。体だけでなく精神面も成長して、「いよいよ本当のオープン馬になったな」と感じた。
6月の帝王賞(大井)では逃げを打った。最後はアブクマポーロとバトルラインに交わされ3着だったが、直線半ばまで先頭を譲らなかった。菅原騎手はこう思った。
「やっぱりアブクマポーロは強い。だけどオペラ自身はいいレースをした。3コーナーで手応えが怪しくなった川崎記念の走りとは全然違う」
7月のマーキュリーカップ(水沢)は、3コーナーで先頭に立つと、後続を瞬く間に突き放して圧勝。8月のみちのく大賞典(盛岡)は、レコードタイムで大楽勝した。
次はいよいよ、岩手競馬が誇る大一番、マイルチャンピオンシップ南部杯(盛岡)。船橋のアブクマポーロが参戦を表明し、対決ムードが高まった。アブクマポーロはメイセイオペラを一蹴した川崎記念を皮切りに、ダートの重賞を6連勝中。名手・石崎隆之騎手を背に無類の強さを誇り、“船橋の怪物”と呼ばれていた。
98年10月10日、盛岡競馬場。南部杯のファンファーレが鳴り響くと、大入りのスタンドから拍手と歓声が沸き起こる。1番人気はアブクマポーロで、2番人気は前年覇者のタイキシャーロック。メイセイオペラは3番人気に支持された。菅原騎手は、「思い切ったレースをして、ファンの期待に応えたい」と考えていた。
メイセイオペラは好スタートを決めて、難なく先頭に立った。ぴったり折り合って道中を進んだ。直線、メイセイオペラが後続を突き放すと、スタンドはお祭り騒ぎ。地元馬の鮮やかな逃げ切りに、大歓声が弾けた。
暮れの東京大賞典は、アブクマポーロに交わされて2着。しかし陣営は悲観しなかった。2000㍍の帝王賞や東京大賞典ではアブクマポーロに敗れたが、1600㍍の南部杯では勝利した。つまりメイセイオペラにとっては、マイル戦がベストなのだ。
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