story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 65
新時代の幕を開けたダービー馬
ジャングルポケットが築いた礎
2021年9月号掲載掲載
トニービン産駒の特徴から
感じたダービーへの手応え
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ただ、共同通信杯のレースを見た時に、逆転の目が出てきたと横手は感じる。最後の直線で大外に進路を取ったジャングルポケットは、長くいい脚を使うトニービン産駒らしく、一完歩ごとに加速に乗っていった。
「ジャングルポケットもそうですが、トニービンの仔は不器用な馬が多く見られました。コーナーでは加速を付けられないので、直線で体勢を立て直し、手前を替えてから、ようやく加速へと入る。共同通信杯を見ても末脚は確かでしたし、東京コースでなおかつ、距離が延びるダービーなら、アグネスタキオンを差し切れるのではないかと思いました」
皐月賞では後方から脚を伸ばしていくも、先に抜け出したアグネスタキオンを捉えられずに3着に敗れたが、横手はダービーに向けて目処が立ったレースだと見ていた。
そのダービーを前に、アグネスタキオンは左前浅屈腱炎を発症。ジャングルポケットにとっては最大のライバルがいなくなったが、相手関係を抜きにしても、同世代の中で最も東京競馬場の芝2400㍍を速く走れるのは、ジャングルポケットであるという思いに変わりはなかった。
ダービーの前に行われたNHKマイルCでクロフネが優勝し、横手厩舎の育成馬としては初のGI馬となり、横手にとってはまさに追い風の吹く中で行われた日本ダービー。
1番人気はジャングルポケット、2番人気はクロフネと横手厩舎の出身馬が上位人気を集めたレースは縦長の隊列で進み、2頭は後方に構えた。最後の直線で、先に動いたクロフネが馬場の真ん中から抜け出しを図る。
その時、外から脚を伸ばしてきたのがジャングルポケットだった。横手の言葉通りに、手前を替えてから加速すると、スピードの違いと完歩の大きさで、一気に先頭へ躍り出る。
「テレビで見ていましたが、凄い馬だなあと、どこか感心していました。その後、牧場にいたスタッフたちと、祝勝会という名目でバーベキューをしたのですが、みんなの嬉しそうな表情を見た時に初めて、ダービーを勝てた喜びが湧き上がってきました」
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