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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    敗れても信じ抜いた
    トップロード最大の長所

    1999年 京都新聞杯 ● 2着 春のクラシックは3、2着。秋初戦もアドマイヤベガ(緑帽)のダービーの再現のような末脚に屈した(青白帽)©K.Yamamoto

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     菊花賞を前に、トップロードの姿は10月の京都新聞杯にあった。ダービー馬を押しのけて、堂々の1番人気に推された。レースでは中団を進み、いつものごとく直線で先頭に立ったが、またしてもクビ差、ベガに差し切られてしまった。“早仕掛け”“渡辺では勝てない”との声がより大きくなる中、三冠最終戦は11月7日にやって来たのである。

     1番枠を出て、トップロードは先行馬群の内に控えた。逃げ馬不在でスローに落ちる中、相棒が気持ちよく走れるよう、渡辺は折り合いに専念した。トップロード一番の長所は、長くいい脚を使えるところにある。その長所を最大限活かすべく、この日もスタイルを変えず、直線で馬群がばらけると同時にゴーサインを出した。“また差されるかも”の恐怖と戦いながらだ。オーナーからの「悔いの残らないよう好きに乗りなさい」という言葉が渡辺の支えになっていた。

     1番人気のベガを見れば後方でもたついていた。2番人気のオペラオーがまたも迫ってきたが、皐月賞のように差は詰まらなかった。上がり34秒0で他馬を振り切ると、遂に歓喜のゴールへと人馬は飛び込んだのだ。渡辺の左手が高く上がった。着差はクビに過ぎなかったが、レースの印象ははっきり完勝だった。

     師弟にしてみれば、実にここまで、長く苦しい戦いが続いた。いずれもが名勝負となった三冠の中で、互いを信じ、馬を信じ、多くの思いと悔しさとが見事なまでに昇華した菊花賞の制覇だった。美しいゴールシーンに観客の誰もが酔った。

     レース後の陣営に涙はなかった。取り囲む記者に渡辺は笑顔で話したものだ。「今日は泣きません」と。

    1999年 菊花賞 ● 優勝 長所を活かすロングスパートで悲願のGI制覇。長く 苦しい戦いに勝利した渡辺騎手は歓喜のガッツポーズ©T.Kaga

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    “差される”不安と戦った菊花賞。それでも渡辺騎手はオーナーからの言葉を胸に、ひたむきに愛馬を導く(白帽)©H.Watanabe

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