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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    短距離馬のトップとして挑んだ
    距離の壁への戦い

    2006年 有馬記念 ● 3着 ディープインパクトに次ぐファン投票2位。同年のマイルチャンピオンシップ優勝馬として10年ぶりに出走(左青帽)©Y.Hatanaka

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     06年有馬記念は、ディープインパクトが3馬身差の圧勝で有終の美を飾った。2着はポップロック。ダイワメジャーは2番手から粘り込み、そこから3/4馬身差の3着に入った。

     マイルチャンピオンシップの勝ち馬がその年の有馬記念に出走したのは、96年ジェニュイン(14着)以来、10年ぶりの出来事だった。そしてこれ以降は1頭もいない。かつてはサッカーボーイ、オグリキャップ、ダイタクヘリオスが出走したが、時代が平成に移るとともに、ほぼ消えた。

     ちなみに最高着順は、最も古い例である88年サッカーボーイの3着だった。18年ぶりにそれに並んだダイワメジャーの走りを、歴史的と呼ばずして何と呼べばいいだろうか。

     この年、JRA賞最優秀短距離馬を獲得したダイワメジャーは、6歳となった07年も活躍を続けた。

     春はUAEに遠征しドバイデューティフリーで3着。そして帰国後は安田記念を制覇した。もう誰も驚かない、堂々たる王者の勝利だった。

     その後は宝塚記念12着。毎日王冠3着。天皇賞(秋)は他馬の斜行の煽りを受ける不利が響き9着と連覇はならなかったが、続くマイルチャンピオンシップでは3番手から抜け出して押し切る得意の形で、史上5頭目の連覇を達成。同一年春秋マイルGI制覇も同じく史上5頭目の快挙で、2年連続となる最優秀短距離馬のタイトルを確実にした。

     迎えた引退レースは、またしても有馬記念だった。

     ダイワメジャーは中団から上昇し、2年連続の3着となった。勝ったのはマツリダゴッホ。そして2着は、道中2番手から早めに先頭に立つ競馬で粘り込んだダイワスカーレット。ダイワメジャーの3歳下の妹だった。

     最後は距離のカテゴリーに挑戦する姿で僕たちの胸を打ったダイワメジャーは、これでターフを去った。気性難もノド鳴りも克服してきたように、もしあと1年走れば、次は有馬記念だって勝つかもしれない。そんなふうにも思わせる引退だった。

     そしてその「もし」は翌年、妹のダイワスカーレットが実現した。筋肉質な栗毛の馬体で逃げたダイワスカーレットは、そのまま押し切って勝利。トウメイ以来37年ぶりとなる、牝馬の有馬記念制覇を達成した。

     どこまでも底知れない馬だったダイワメジャーに今、キャッチコピーを付けるとしたら。やっぱりすぐには思い浮かばない。その器の大きさに見合った言葉は、たぶんまだ見つかっていない。(文中一部敬称略)

    2007年 マイルチャンピオンシップ ● 優勝 安田記念に勝利しマイル王の地位を不動にすると、秋は早め先頭から再び接戦を制す(青帽)。この年も着差は「クビ」だった©Y.Kunihiro

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    2007年 有馬記念 ● 3着 妹ダイワスカーレット(青帽)との最初で最後の対決。ともに戴冠はならずも、グランプリ制覇の夢は翌年妹が結実©Y.Kunihiro

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    ©M.Yamada

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    ダイワメジャー DAIWA MAJOR

    2001年4月8日生 牡 栗毛

    サンデーサイレンス
    スカーレットブーケ(父ノーザンテースト)
    馬主
    大和商事㈱→大城敬三氏
    調教師
    上原博之(美浦)
    生産牧場
    社台ファーム
    通算成績
    28戦9勝 (うち海外1戦0勝)
    総収得賞金
    10億6181万900円 (うち海外5958万900円)
    主な勝ち鞍
    07・06マイルチャンピオンシップ(GI)/07安田記念(GI)/06天皇賞(秋)(GI)/04皐月賞(GI)/ 06毎日王冠(GⅡ)/06マイラーズC(GⅡ)/05ダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ)
    JRA賞受賞歴
    07・06JRA賞最優秀短距離馬

    2021年3月号

    軍土門 隼夫 HAYAO GUNDOMON

    1968年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学を中退後、「週刊ファミ通」編集部、「サラブレ」編集部を経てフリーのライターとなる。現在、「優駿」「Number」などの雑誌やweb媒体などで執筆。著書に「衝撃の彼方 ディープインパクト」がある。

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