story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 58
乾坤一擲の大逃げ
ツインターボが愛される理由
2020年11月号掲載
予定調和の逃走も
そこに感じられた変化
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オールカマーの圧勝を受けて、ツインターボの人気は爆発した。次走の天皇賞(秋)では金曜前売り発売で1番人気(最終的には3番人気)に支持されたのだ。オールカマーのラップタイム(2000㍍通過が1分59秒6)から逆算すると通用してもおかしくないという説もあり、ファンの期待どおりに単騎逃げを打ったのだが、4コーナーで早々と捕まり2秒8差の最下位に敗れてしまった。
年が明けた94年のアメリカJCCこそ逃げてコンマ6秒差の6着に逃げ粘ったが、それ以降は逃げて1秒差以上の大敗を繰り返した。94年有馬記念は勝ったナリタブライアンから5秒も離された最下位に沈んだ。
ファンは予定調和のような玉砕逃げに沸いたが、馬自身はレースで逃げているのではなく、すでにレースから逃げているようにも感じられた。もともと気持ちで逃げていた馬である。中舘騎手も引退後に「オールカマーで燃え尽きちゃったような気もする」と語っている。
逃げ馬の個性を強調するときに「生粋」という修飾語を使うことがある。しかしこの言葉が文字通りにハマるのはツインターボしかいないように思う。デビューから中央競馬の引退まで、すべてのJRAのレースで一度たりともハナを譲ることなく、重賞を3勝もあげた逃げ馬はツインターボだけだろう。
95年に上山に移籍、96年に引退して種牡馬になったが5頭の産駒を残しただけで98年に心不全で亡くなった。この世を去ってからすでに20年以上が経つが、今でもツインターボが力一杯に逃げる姿は、我々の心の中から逃げ去ることなく焼き付いている。
ツインターボ TWIN TURBO
1988年4月13日生 牡 鹿毛
- 父
- ライラリッジ
- 母
- レーシングジイーン(父サンシー)
- 馬主
- 黒岩晴男氏→武田二男氏
- 調教師
- 笹倉武久(美浦)→秋葉清一(上山)
- 生産者
- 福岡敏宏氏
- 通算成績
- 35戦6勝(うち地方13戦1勝)
- 総収得賞金
- 1億8670万8000円(うち地方139万円)
- 主な勝ち鞍
- 93オールカマー(GⅢ)/93七夕賞(GⅢ)/91ラジオたんぱ賞(GⅢ)
- JRA賞受賞歴
- ―
2020年11月号