story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 54
史上3頭目の牝馬三冠馬
アパパネに輝く5つのティアラ
2020年7月号掲載
新旧女王対決で果たした
牝馬三冠馬“初”の記録
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アパパネの最後の勝利は2011年ヴィクトリアマイルだった。1歳年上のブエナビスタとの頂上対決が実現した。東京競馬場の芝1600㍍を舞台に行われるレースは両馬にとってともに得意な条件だった。アパパネが東京競馬場で3戦無敗だったのに対し、2連覇を狙うブエナビスタは芝1600㍍で5戦5勝の成績を残していた。
どっちが強いのか、どちらが勝つのか。ファンはブエナビスタ有利と見てオッズ1・5倍の1番人気に支持した。アパパネは4・1倍の2番人気で続いた。
だが横綱相撲をしたのはアパパネの方だった。常にブエナビスタの前でレースをし、スパートも先だった。上がり3ハロンはブエナビスタの方が0秒3も速い34秒0だったにもかかわらず、ゴールではクビ差だけアパパネが先着した。
この勝ち星は貴重だった。メジロラモーヌもスティルインラブも牝馬三冠に輝いた後は1勝もすることができず、引退した。アパパネの勝利は牝馬三冠馬が三冠後に挙げた史上初めての白星だった。
筆者はこのヴィクトリアマイルがアパパネのベストレースだと思っている。そして、このレースで燃え尽きたかのようにアパパネらしさは失われ、2012年の安田記念を最後に現役を引退した。
牝馬三冠はアパパネの後、2頭が続いた。2012年のジェンティルドンナ(父ディープインパクト、母ドナブリーニ、栗東・石坂正厩舎)と2018年のアーモンドアイ(父ロードカナロア、母フサイチパンドラ)だ。アーモンドアイはアパパネと同じ国枝調教師に育てられた。
引退から8年近くがすぎ、現役時代のアパパネを知らない若いファンも増えたが、モクレレ、ジナンボー、ラインベックの母だと言えば親しみが湧くはずだ。東京競馬場に行けば、鹿毛のアパパネとは毛色が違う芦毛の半弟のシュガーヒル(父クロフネ)が誘導馬を務めているのを見ることができる。
アパパネの記憶は競馬場の至る所にまだ鮮明に残っている。
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アパパネ APAPANE
2007年4月20日生 牝 鹿毛
- 父
- キングカメハメハ
- 母
- ソルティビッド(父Salt Lake)
- 馬主
- 金子真人ホールディングス㈱
- 調教師
- 国枝栄(美浦)
- 生産牧場
- ノーザンファーム
- 通算成績
- 19戦7勝(うち海外1戦0勝)
- 総収得賞金
- 5億5859万2000円
- 主な勝ち鞍
- 11ヴィクトリアマイル(GI)/10秋華賞(GI)/10オークス(GI)/10桜花賞(GI)/09阪神ジュベナイルフィリーズ(JpnI)
- JRA賞受賞歴
- 09JRA賞最優秀2歳牝馬 /10JRA賞最優秀3歳牝馬
2020年7月号