story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 53
史上最少体重のグランプリホース
ドリームジャーニーの旅路
2020年6月号掲載
充実期を迎え
グランプリで残した記録
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迎えた宝塚記念、スムーズに折り合って後方を進んだドリームジャーニーは直線に向くと力強い末脚を発揮。サクラメガワンダー、ディープスカイを2、3着に従えて、朝日杯フューチュリティS以来のGI制覇を果たした。
そしてハイライトの秋が幕を開ける。始動戦のオールカマーは強襲及ばずにマツリダゴッホの2着、秋の天皇賞は課題の左回りを攻略できず6着に終わったものの、充実期を迎えた馬の状態は高いレベルで安定していた。3歳時は夏に勃発した馬インフルエンザ騒動の余波(検疫の条件が厳格化された)で断念、4歳時は招待の選に漏れた香港への遠征も視野に入れられたその後だが、照準は最終的に有馬記念に定められる。
この年の有馬記念はフルゲートを埋めた16頭中、10頭がGIウイナーという豪華メンバーによって争われた。なかでも最大の強敵と目されたのがGI3勝を記録している3歳牝馬ブエナビスタである。
リーチザクラウンがハイペースの大逃げを打ったなか、ドリームジャーニーは後方2番手で末脚を温存。例によって2周目の3コーナーから徐々に進出を開始する。迎えた直線では先に抜け出しをはかったブエナビスタとの一騎打ちに。4㌔軽い斤量も利して懸命に食い下がったブエナビスタだが、勝利の軍配は息の長い末脚で相手の反撃を封じ込めたドリームジャーニーにあがり、史上9頭目の“春秋グランプリ連覇”の快挙が達成された。
◇
冒頭の話に戻ると、秋山は同じ牝系のサッカーボーイ(=ステイゴールドの伯父にあたる)が多彩な活躍馬を送り出したことを引き合いに出して、種牡馬としての未来予想図をこんな風に描いていた。
「(名マイラーの)サッカーボーイからキョウトシチーやナリタトップロードが出るなんて、誰にも予想できなかったでしょう? 個人的にこの牝系は何が出てくるか分からないビックリ箱と考えています。型にはまらない色々な産駒が出てくると思いますよ」
まさにその通り、ステイゴールドは多彩な大物を次々に送り出した。「ミドルクラス」からスタートした父が一流種牡馬にのし上がっていくうえで、ドリームジャーニーの活躍が重要なファクターとなったことも事実である。
しかし一方で、この馬自身が残した大きな足跡も見逃せない。開業3年目の池江に初の重賞制覇をプレゼントした朝日杯フューチュリティSをはじめ、宝塚記念(424㌔)、有馬記念(426㌔)でも最少体重優勝記録のレースレコードを樹立。ちなみにそれぞれの記録はいまだに破られていない。小さな馬体に激しすぎるほどの闘争心を秘めていたドリームジャーニーは、様々な意味で“ステイゴールド産駒らしい”馬だったと思う。 (文中敬称略)
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ドリームジャーニー DREAM JOURNEY
2004年2月24日生 牡 鹿毛
- 父
- ステイゴールド
- 母
- オリエンタルアート(父メジロマックイーン)
- 馬主
- (有)サンデーレーシング
- 調教師
- 池江泰寿(栗東)
- 生産牧場
- (有)社台コーポレーション白老ファーム
- 通算成績
- 31戦9勝
- 総収得賞金
- 8億4797万3000円
- 主な勝ち鞍
- 09有馬記念(GI)/09宝塚記念(GI)/06朝日杯フューチュリティS(GI)/09大阪杯(GⅡ)/ 07神戸新聞杯(JpnⅡ)/08朝日チャレンジC(GⅢ)/08小倉記念(JpnⅢ)
- JRA賞受賞歴
- 06JRA賞最優秀2歳牡馬 /09JRA賞最優秀4歳以上牡馬
2020年6月号