story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 52
史上初めて日米で女王に戴冠
シーザリオとホースマンの夢
2020年5月号掲載
コンビ復活も、苦戦を強いられた牝馬二冠目
義理を通した事でシーザリオに乗れなかった福永だが、そういう真摯な態度を競馬の神様はしっかりと見てくれていた。桜花賞をラインクラフトで制した時はそう感じたが、本当にそう思えたのは、実はその後の流れにこそあった。
牝馬一冠を制したラインクラフトは、次走をオークスではなく適距離と判断したNHKマイルCへ舵取りした。更に、オークスへ進む事になったシーザリオは、陣営から改めて福永に騎乗依頼が舞い込んだのだ。
「二度と乗れないかもしれないと思っていただけに嬉しいし、ありがたいです」と福永が言えば、角居も「また祐一君に乗ってもらえる。感謝するのはこちらの方です」と語った。
ラインクラフトでNHKマイルCを優勝した福永は、オークスで再びシーザリオとコンビを組む事になったが、その競馬ぶりは決して楽なそれではなかった。桜花賞では完全に脚を余しており、力負けではないと評価されたため、単勝オッズは1・5倍。2番人気のエアメサイアが8・6倍なのだから一本被りといえる状況だった。
しかし、ゲートが開いた瞬間、2頭の明暗が分かれた。3枠5番から好発を決めた武豊エアメサイアが、そのままスッと内へ入ると、隣の2枠4番にいたシーザリオは控えざるをえなくなる。結果、最初のコーナーをカーブした時には後方4番手。その後も流れが上がらない中、モマれ通しでレースは進んだ。4コーナーを回り直線に向いてももがくシーザリオに対し、進路を確保したエアメサイアが先行勢を射程圏に入れた時は“勝負あった!!”かと思わせた。ゴール前ではエアメサイアが先頭に立つ。しかし、やっとの事で外に出したシーザリオが最後の最後で急追。エアメサイアをかわしたところがゴールだった。
「今日は僕のミスです。もっと楽に勝たせてあげなくてはいけませんでした」
当時28歳の福永の表情に勝利した喜びをうかがうことは出来なかった。
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