story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 49
最後まで走り抜いた緑の刺客
グリーングラスの生き様
2020年1月号掲載
三強の一角として名乗りを
挙げた伝説の有馬記念
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この年の有馬記念。グリーングラスは予備登録もしておらず不出走。トウショウボーイ、テンポイントが有馬記念史上初の3歳馬1、2着という快挙を記録して新しい年を迎えることになった。
4歳。グリーングラスの初戦は1月のアメリカジョッキークラブカップ。ここで彼は“フロック勝ち”の汚名を返上する。前年秋の天皇賞馬アイフル、ダービー馬クライムカイザーなど強豪が揃った一戦で3コーナー過ぎから捲り気味に仕掛け、あっという間に先頭に立つと、そのまま力でねじ伏せ、レコードタイムで優勝。「遅れてきた青年」の視界にはTTの後ろ姿が少し近づいてきた。が、この勝利でもまだ2頭との実力の差は歴然だった。
天皇賞(春)。トウショウボーイは不在だったが、無冠の帝王と呼ばれていたテンポイントが万全の仕上がりで出走。圧倒的な1番人気に応え完勝。グリーングラスは菊花賞同様内から必死の抵抗を試みたが4着に敗れ去った。その後、宝塚記念で2度目のTTG対決が実現したが、トウショウボーイ、テンポイントの前に3着。2頭の牙城は崩せなかった。
7月。日本経済賞をレコードタイムで勝ち、存在感を示したが、あくまでもわき役の域を脱することはできなかった。そんなグリーングラスが三強の一角として名乗りを挙げたのが、競馬史上屈指の名勝負として語り継がれているこの年の有馬記念だった。改めてこのレースの映像を鑑賞してもらえれば、TT対決ではなく、TTG決戦だったことが分かってもらえると思う。
トウショウボーイは有馬記念を最後に現役生活に終止符を打つ。テンポイントにとっては雪辱のラストチャンス。戦前、こんな記事がスポーツ紙を中心に躍った「第22回有馬記念」。
レースの詳しい内容は省略するが、スタートしてすぐにトウショウボーイが先頭を奪い、テンポイントがピタリと横につける。途中、何度か2頭の順位は入れ替わるが、ほかの馬は徐々に後方に置かれていった。直線に入っても2頭の“デッドヒート”は続き、ゴール前、テンポイントが3/4馬身だけ抜け出し、名勝負は幕を閉じた。が、ただ1頭、グリーングラスが外から両雄に迫っていた。トウショウボーイに半馬身差の3着。彼から6馬身離されて、この年の菊花賞馬プレストウコウが入線した。
ゴールがあと10㍍先にあったら―。勝負の行方はわからなかった。あくまでも「たら・れば」の話だが、この一戦でTTからTTGへと呼び方が変わった。しかし、すぐにGだけが残されることになる。
翌年、トウショウボーイはターフを去り、テンポイントも1月の日本経済新春杯で故障、懸命の治療の甲斐もなく、惜しまれつつ3月にこの世を去った。残されたグリーングラスに課せられたのは偉大な2頭の跡を継ぐことだった。