story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 44
舞台を問わない平成の万能型
アグネスデジタルの旅路
2019年7月号掲載
国境を越えての転戦で
状態を上げていった
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芝でもダートでも真価を示すことができるという特性を遺憾なく発揮していたアグネスデジタルが、アウェイでもホームと同様のパフォーマンスができるという特性を初めて披露したのが次走だった。シャティンを舞台としたG1香港Cを快勝。同年の香港国際競走では、香港ヴァーズをステイゴールドが、香港マイルをエイシンプレストンが制し、敵地でのG1・3連勝という日本競馬史に燦然と輝く偉業が達成された。
帰国初戦のGIフェブラリーSも快勝したアグネスデジタルだったが、勇躍挑んだG1ドバイワールドCでは6着という不本意な成績に終わった。輸送便が経由地の香港で機材トラブルを起こし、現地到着が予定より6時間遅れるというアクシデントがあったのに加え、集中豪雨のためレース当該週の追い切り予定が変更になるという不運に見舞われたのだ。
しかし、同馬の第二の特性が改めて浮き彫りになったのが次走だった。アグネスデジタルはG1クイーンエリザベスⅡ世Cに挑むべく、ドバイから香港へ転戦したのである。60年代終盤にスピードシンボリが英国から仏国に渡り、70年代前半にメジロムサシが仏国から米国に渡った例はあったが、日本馬の海外遠征が日常的になった90年代以降、敵地から敵地へ国境を越えての転戦というのは、ほとんど見られたことがなかった。アウェイで続戦しつつ出走態勢を整えるのは、容易ならざることなのだ。
ところが、前述したような理由でドバイでは本調子になかったアグネスデジタルが、香港に渡ると日毎に状態を上げていったのである。そして、エイシンプレストンの2着に入り、日本馬による1・2着独占という快挙の一翼を担ったのであった。
その後はさすがに疲労が出たアグネスデジタルだったが、1年以上の休養を経て03年5月に復帰。2戦目となったGI安田記念をトラックレコードで快勝して、4年連続GI制覇を成し遂げている。
様々な既成概念を覆した異端の天才は、どんな環境におかれても全能力を発揮しようと試みる、誠にもって真摯なアスリートであった。
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アグネスデジタル AGNES DIGITAL
1997年5月15日生 牡 栗毛
- 父
- Crafty Prospector
- 母
- Chancey Squaw(父Chief's Crown)
- 馬主
- 渡辺孝男氏
- 調教師
- 白井寿昭(栗東)
- 生産者
- Catesby W.Clay & Peter J.Callahan(米国)
- 通算成績
- 32戦12勝(うち地方8戦4勝、海外3戦1勝)
- 総収得賞金
- 9億4889万2700円(うち地方1億8530万円、海外2億1796万7700円)
- 主な勝ち鞍
- 03年安田記念(GⅠ)/02年フェブラリーS(GⅠ)/01年香港カップ(香港-GⅠ)/01年天皇賞(秋)(GⅠ)/01マイルチャンピオンシップ南部杯(GⅠ)/00マイルチャンピオンシップ(GⅠ)/99年全日本3歳優駿(GⅡ)
- JRA賞受賞歴
- 01JRA賞最優秀4歳以上牡馬
2019年7月号