story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 40
比類なき末脚の持ち主。
ハープスターの挑戦
2019年1月号掲載
3歳牝馬による、日本からの
挑戦の道筋を切り開いた
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第93回凱旋門賞。日本からはハープスター、ゴールドシップ、ジャスタウェイも出走したレースには、牧場から応援に来ていた日下の姿もあった。
「ブエナビスタで行けなかった時には、もう、3歳で凱旋門賞に出走できるような牝馬は出て来ないだろうと思っていました。それだけに、凄いところに連れてきてもらったという、不思議な感覚もありました」
世界の舞台でも、自身のスタイルを貫き、後方からレースを運んだハープスターは、直線で追い込みを図るも、勝ったトレヴには届かず6着に。しかしながら、斤量面で恩恵のある3歳牝馬による、日本からの挑戦の道筋を切り開いた。
凱旋門賞の後は、ジャパンCと京都記念でいずれも5着。そして、2度目の海外遠征となるドバイシーマクラシックで8着に敗れた後は再起を図るべく、ノーザンファーム早来へと戻ったが、その際の検査で、右前肢に繋靭帯炎と種子骨靭帯炎が併発していることが判明した。
「時間をかければ復帰も可能だったかもしれません。ただ、繁殖牝馬として絶対残さなければならない血統でしたし、引退を告げられた時も仕方ないと思いました」
繁殖入りしたハープスターはキングカメハメハとの間に、18年現在2歳となる牝馬アストライアを出産。3年前から牝馬厩舎全体の調教主任となった日下の下で鍛えられた。そして、今は栗東の池添学厩舎に入厩しており、デビューも視野に入っている。アストライアの後は産駒に恵まれていないが、年齢的にもまだまだ多くの子供を送り出してくれることだろう。
今年、史上5頭目の牝馬三冠馬となったアーモンドアイも日下が調教主任となってから送り出した馬となる。
「ハープスターやブエナビスタのような超一流の馬は、そうそう出て来ないとだろうと思っていただけに、アーモンドアイの活躍は驚きでしたし、今後もそう時間を置かずに超一流の牝馬は出てくるはずです。以前は牡馬を負かすような牝馬を送り出すたびに、『任されているのが牝馬で良かった』と思っていましたが、むしろ今では『牝馬を任されていて良かった』と思っています」
数年後の凱旋門賞。その時、日本馬として初めて勝利を収める馬は、日下の下から送り出された、ハープスターの血を引く牝馬なのかもしれない。
(文中敬称略)
ハープスター HARP STAR
2011年4月24日生 牝 鹿毛
- 父
- ディープインパクト
- 母
- ヒストリックスター(父ファルブラヴ)
- 馬主
- ㈲キャロットファーム
- 調教師
- 松田博資(栗東)
- 生産牧場
- ノーザンファーム(北海道・安平町)
- 通算成績
- 11戦5勝(うち海外2戦0勝)
- 総収得賞金
- 3億6024万8000円
- 主な勝ち鞍
- 14桜花賞(GⅠ)/14札幌記念(GⅡ)/14チューリップ賞(GⅢ)/13新潟2歳S(GⅢ)
- JRA賞受賞歴
- 14最優秀3歳牝馬
2019年1月号