story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 34
瞬く間に確立した“絶対王政”。
キングカメハメハの魅力
2018年6月号掲載
凄まじい勢いで強くなっている
真っ最中に、キャリアを終える
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キングカメハメハの話に戻ると、ダービー後は休養し、秋初戦は阪神芝2000㍍の神戸新聞杯となった。8頭立ての少頭数のここでは後方を追走し、3コーナー過ぎから進出。直線で外から脚を伸ばし、1馬身1/4差で勝った。
目標としていた天皇賞(秋)に向けて視界良好と思われたが――。
天皇賞(秋)に向けた調整中、右前肢浅屈腱炎を発症。10月21日、松田調教師は記者会見で同馬の故障を説明、そして23日に現役引退を発表した。
凄まじい勢いで強くなっている真っ最中に、キャリアを終えることになったのだ。
ラストランとなった神戸新聞杯の直線では左手前で走り切っていた。右回りコースでも直線で何度か手前を替えていたことはあったが、左回りの直線よりはスムーズだった。おそらく、左手前で走ることが好きだったのだろう。となると、長い直線を左手前で走るロンシャン競馬場の凱旋門賞に出ていたら面白かったのでは……など、いくつもの「タラレバ」が浮かんでくる。
当時の日本調教馬としては最高額の21億円のシンジケートが組まれ、種牡馬となった。供用初年度となった05年、244頭の国内史上最多となる種付けをこなす人気ぶりだった。
10年と11年にはリーディングサイヤーに。サンデーサイレンス系以外としては1994年のトニービン以来、日本ダービー優勝馬としては52~57年のクモハタ以来のタイトルであった。
代表産駒には、2歳王者となった翌年ジャパンCを制したローズキングダム、牝馬三冠馬アパパネ、スプリント界の絶対王者ロードカナロア、ダート王ホッコータルマエ、二冠馬ドゥラメンテなど、一部をピックアップしただけでも、さまざまなタイプの馬がいる。
牡でも牝でも、芝でもダートでも、短距離でも長距離でも強い――というように、大きな能力の幅を子孫に伝えている。産駒が活躍する舞台のバリエーションという点では、1年後輩のディープインパクトを凌ぐものがある。
父の絶対的な能力の高さを、産駒たちが証明しつづけているわけだ。
舞台が大きくなるほど強烈な走りをし、「どこまで強くなるのだろう」と思わせた。そうして自身の「血」の価値を高めていたさなか、現役を退くことになった。あり得ないタラレバだが、怪我をしていなかったら、物語のつづきはとてつもなくスケールの大きなものになっていたはずだ――という私たちの確信を、ときが経つほどに強めていく。だからキングカメハメハは特別なのか。
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キングカメハメハ KING KAMEHAMEHA
2001年3月20日生 牡 鹿毛
- 父
- Kingmambo
- 母
- マンファス(父ラストタイクーン)
- 馬主
- 金子真人氏
- 調教師
- 松田国英(栗東)
- 生産牧場
- ノーザンファーム(北海道・早来町)
- 通算成績
- 8戦7勝
- 総収得賞金
- 4億2973万3000円
- 主な勝ち鞍
- 04日本ダービー(GⅠ)/04NHKマイルC(GⅠ)/04神戸新聞杯(GⅡ)/04毎日杯(GⅢ)
- JRA賞受賞歴
- 04最優秀3歳牡馬
2018年6月号