story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 20
エリートに挑んだ野武士
ハイセイコーが作った時代
2016年12月号掲載
いいレースをしながらも
勝利が遠かった3歳秋シーズン
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夏を厩舎で過ごしたハイセイコーは最後の一冠を目指し京都へ遠征。前哨戦の京都新聞杯は2着に敗れはしたものの順調さをアピール。一方、タケホープは8着と惨敗。本番へ向け不安を残す結果となった。
11月11日。菊花賞。アイドルは見限らず応援してくれるファンのために力強いレースを見せてくれた。4コーナーを回ると一気に加速、直線では後続馬に5、6馬身の差をつけて独走態勢に入った。誰もがその勝利を確信しようとしたとき、タケホープが襲い掛かる。徐々に差は縮まり、並んだところがゴールだった。
勝負の行方はまったくわからなかった。
鼻差の2着。またしてもライバルの前に屈した。しかし、今回の敗戦にファンは落胆したものの、それほど虚しさは感じなかった。まるで虐げられる主人公が最後に復讐を果たす。そんなありふれた、それでいて妙に胸躍る物語を楽しむかのように、新たなページを捲る準備をした。そして、ファン投票1位で臨んだ有馬記念でも先行馬を捉えきれずに敗れてしまい、結末は新しい年へ持ち越されることになった。
余談になるが、ハイセイコーが菊花賞で惜敗する前の月、第四次中東戦争が勃発。オイルショックが日本経済を直撃した。石油製品だけではなく便乗値上げも相次ぎ、未曾有の不況が忍び寄って来た。
田中角栄の成り上がりの時代から耐え忍ぶ時代へ。この頃、この国にはハイセイコーの歩みを彷彿させる風が吹いていた。