story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 20
エリートに挑んだ野武士
ハイセイコーが作った時代
2016年12月号掲載
元祖アイドルホース・ハイセイコー。地方競馬から中央へ移籍し"野武士"として愛されたアイドルホースで、競馬のイメージを"娯楽"へと変換させた立役者でもある。
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改めて、あの“熱狂の日々”は何だったのだろうか、と思う。
1頭のサラブレッドが奏でた狂想曲。それは競馬の世界を軽々と飛び越えて日本中に響き渡り、社会現象にまでなった。
ハイセイコーの時代。
40数年前の出来事。
いま、大半の読者はあの時代を知らないだろう。もしかしたら、年配の競馬ファンから「それはもう大騒ぎだったよ」という類の話を聞かされた人もいるかもしれない。
たしかに地方競馬から中央へやって来たハイセイコーに驚くほど多くの人たちが声援を送った。マスコミもこぞって《選ばれたエリートに挑む野武士》などと囃したてた。
一過性のお祭り騒ぎ、と言ってしまうのは簡単だが、あの熱狂の日々が競馬を取り巻く環境を大きく変化させたのも事実だ。それまで当たり前だと思っていた「競馬=ギャンブル」の枠を取り払い、誰もが楽しめるレジャーとして認知されるようになった。そして、他のスポーツ同様、純粋にヒーローを応援する気分を芽生えさせてくれた。
ハイセイコーの時代。
それは何よりも私たちが知らなかった競馬の楽しみ方を教えてくれた貴重な時代だった。