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出走馬の様子
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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    転進と圧勝とーー
    異次元の走りに期待が高まるも…

    ©H.Watanabe

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     いざ特別登録が出てみると、予想されなかったアグネスデジタルの名がそこにあったのだ。賞金順で出走権を得たのは同馬とメイショウドトウ。アグネスデジタルは実際にこの天皇賞(秋)を制したのだから、その選択を責めることはできない。

     締め出された形のクロフネは、別な舞台で、ひょっとすると天皇賞(秋)を勝つよりも衝撃的なパフォーマンスを披露した。武蔵野ステークス。初手こそ中団に位置したものの、早めに進出。圧巻は大欅の向こうから4角にかけて、逃げたサウスヴィグラスを捉えにいくシーンだ。他馬とはケタ違いのストライドで悠々と交わし、そこからいったん後続を映したカメラが先頭に戻ったときには、既に勝負は完全に決していた。

     最終的につけた着差は9馬身。タイムは1分33秒3のレコード。しかし、そういう数字の問題ではない。観客に、これは見たことのない次元の走りだと、直感させるレースだった。

     続くジャパンカップダートも馬なりの捲りという異次元の走りで圧勝。それまでのダート王ウイングアローに7馬身差をつけ、アメリカから来たリドパレスを子ども扱い。こうなるとファンが期待するのは海外の大レース制覇である。開放をテーマに内国産馬と戦った日々は終わり、タイキシャトルらが果たしたのと同じような役割をクロフネが果たすのだと考えた者は多かったことだろう。

     しかしクロフネは突然競走馬としてのキャリアを終えることになる。12月、右前肢に重い屈腱炎が判明。すぐに競走馬登録は抹消された。翌春のドバイワールドカップ制覇を期待していたファンにとって、あまりに急であっけない別れであった。

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