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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

未来に語り継ぎたい名馬物語 18

美麗でしなやかなサラブレッド
スペシャルウィークと府中芝2400㍍

島田 明宏 AKIHIRO SHIMADA

2016年10月号掲載

1998年のダービーを制したスペシャルウィーク。3歳時にダービー制覇を成し遂げると、翌年は天皇賞春秋連覇やジャパンC勝利など、武豊騎手とともにビッグレースで輝いた優駿だ。

    3歳時の三強対決や、4歳時の”怪物”とのライバル対決など、競馬シーンを熱く盛り上げた1頭だった©H.Imai/JRA

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     栗東トレーニング・センターで調教をこなしていた武豊に、調教師の白井寿昭が声をかけた。
    「サンデーの男馬がおるんやけど、乗ってくれるか」

     流星に特徴のある黒鹿毛の2歳馬が、調教スタンド前に曳かれてきた。

     ――ハンサムな馬だなあ。

     というのが、武がその馬、スペシャルウィークから得た第一印象であった。

     1997年11月29日の新馬戦に向けた追い切りでのことだった。

     走らせてすぐ、武は、乗り味の素晴らしさに驚いた。スタミナも抜群で、ゲートから1マイルで104秒ほどの好タイムを叩き出したにもかかわらず、すぐ息が戻り、ケロッとしている。

     武は、いまだ手にしたことのないダービーの栄冠が近づいてきたのを感じた。

     同時に、前年のダービーで2着に惜敗したダンスインザダークの背中の感触が思い出された。牧場でダンスインザダークに跨ったときは、自身の手綱でオークスを勝ったダンスパートナーの全弟だと知っていたので、乗る前から楽しみにしていた。それに対し、スペシャルウィークとの出会いは突然だった。管理者の白井が演出したサプライズだったのか。

     スペシャルウィークは、ダンスパートナーと同じ白井厩舎で、担当する持ち乗り調教助手も同じ村田浩行。しかも、デビュー戦は、ダンスインザダークのそれと同時期、同舞台である阪神芝1600㍍の新馬戦だ。武は、この馬をめぐる不思議な縁のようなものを感じた。

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