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出走馬の様子
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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    GⅠで初めて掲示板を外した日に
    感じたこと、気づいたこと

    2014年ドバイシーマクラシックでは最後の直線で前が塞がる不利を受けながら、前年2着の雪辱を果たしてみせた©Y.Kunihiro

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     私がいま思い出すのは、2014年宝塚記念のジェンティルドンナだ。この日ジェンティルドンナは3番人気に推されていたが、まったく伸びず9着に敗れ、GⅠで初めて掲示板を外した。

     走り終えて戻ってきたジェンティルドンナはがっかりしていた。毛づやも悪く馬体のハリもないように感じた。二年越しの夢であるドバイシーマクラシックを制した後だっただけに、さすがに疲れているんだろうなあと思いながらその姿を眺めていると、なんとも言えない気持ちになった。女だてらに日本競馬界を引っ張っているんだよなあ。大変だな、きみも。そう思うと愛おしさがこみ上げた。

     一昔まえなら、牝馬クラシックを一つでも獲ればもうスターホースで、有馬記念に顔を出して負け、でも無事に走れてよかったね、いいお母さんになってねと言われて寿引退をするのが常識だったけれど、いまの世の中そうじゃない。血統だけなら世界中から並みいる良血馬が集まってくるし、お嫁に行くにも成績が大事。いい種牡馬とカップルになろう、子どもを高く買ってもらおうと思うなら、そうされるだけの値打ちを自分で示さなくちゃならない。5歳末まで走り続け、牡馬と互角にやり合い、タイトルを増やしていったジェンティルドンナは、そんないまどきオンナ馬のお手本である。ジェンティルドンナの競り合いを見るにつけ、私も頑張らねばと励まされた女性ファンはきっと多いはずだ。

     たしかにキャリアも子育ても迫られる優秀牝馬の馬生は、大変の一言に尽きる。けれど、競馬ほど華やかな世界はほかにないと私は思う。その華やかさを自分の脚で演出し、同期の女たちを、そして超一流の男どもを翻弄してきたジェンティルドンナは、まさに女がホレる女の中の女だった。

    ©H.Watanabe

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    ジェンティルドンナ GENTILDONNA

    2009年2月20日生 牝 鹿毛

    ディープインパクト
    ドナブリーニ(父Bertolini)
    馬主
    ㈲サンデーレーシング
    調教師
    石坂正(栗東)
    生産牧場
    ノーザンファーム
    通算成績
    19戦10勝(うち海外2戦1勝)
    総収得賞金
    17億2603万400円(うち海外3億9982万400円)
    主な勝ち鞍
    14有馬記念(GⅠ)/14ドバイシーマクラシック(UAE-G1)/12・13ジャパンC(GⅠ)/12秋華賞(GⅠ)/12オークス(GⅠ)/12桜花賞(GⅠ)/12ローズS(GⅡ)/12シンザン記念(GⅢ)
    表彰歴等
    顕彰馬(16年選出)
    JRA賞受賞歴
    12年度代表馬、最優秀3歳牝馬/13最優秀4歳以上牝馬/14年度代表馬、最優秀4歳以上牝馬

    2016年4月号

    谷川 直子 NAOKO TANIGAWA

    1960年生まれ、兵庫県出身。筑波大学第二学群比較文化学類を卒業後、「詩と思想」「現代詩手帖」などの雑誌編集に携わる。著書に「競馬の国のアリス」「芦毛のアン」「注文の多い競馬場」など(高橋直子名義)。

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