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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    凱旋門賞は2着惜敗だったが
    「勝ち馬が2頭いた」と称された

    1999年の凱旋門賞。逃げるエルコンドルパサーの外から仏愛ダービー馬のモンジューが襲いかかる 【H.Imai(JRA)】

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     パリは雨が続き、当日のロンシャンはレース史上でも類を見ないと言われたほどぬかるんだ、不良馬場となった。その年のキングジョージ勝ち馬で、前走の愛チャンピオンSを9馬身差で制していたデイラミですら戦意を喪失し大敗したほどの消耗戦を、エルコンドルパサーは闘い抜いた。逃げて、残り1ハロンまで頑張り、モンジューに交わされた後にもう一度抜き返そうとする姿勢を見せて、半馬身差の2着となった。3着以下が6馬身突き放されたこの年の凱旋門賞は「勝ち馬が2頭いた」と称され、公式ハンディキャッパーはエルコンドルパサーに、現在も日本調教馬としての歴代最高値として燦然と輝くレーティング134を与えた。

     ジャパンCを使って欲しいという声は、主催者であるJRAからも、翌春から繋養される社台スタリオンステーションからも届いたが、名馬の引き際とはかくあるべきとの主張を曲げなかった渡邊氏は、当初の予定通り凱旋門賞を最後にエルコンドルパサーの現役生活に幕を引いた。ジャパンC当日の東京競馬場で引退式が行われたが、鍛え上げられた筋肉をみっしりと纏ったエルコンドルパサーの馬体はピカピカに輝いており、久しぶりにその姿を目のあたりにした日本のファンも、「JCに出ていたら楽勝だった」と囁きあった。日本では一度も走らなかったことが物議を呼んだものの、仏国で積み上げた功績を評価され、エルコンドルパサーはこの年、日本の年度代表馬となった。

     エルコンドルパサーは02年7月16日、疝痛の発作を起こして7歳で早世。残されたわずか3世代の産駒から、菊花賞馬ソングオブウインド、ダートGⅠ(JpnⅠ)9勝のヴァーミリアン、JCダート優勝のアロンダイト、長距離重賞3勝のトウカイトリック、1200㍍のJpnⅢオーシャンS勝ち馬アイルラヴァゲインなど、様々なタイプの活躍馬を出した。

     現役引退から15年が経過した14年、エルコンドルパサーは待望の殿堂入りを果たし、名実ともに競馬史にその名を残すことになった。

     あれだけの競走能力を持ち、あれだけの血統を背景にしたエルコンドルパサーである。その血脈を何らかの形で受け継ぐ馬が、世界のメジャータイトルを獲る日が、いつかは来ることを筆者は確信している。

    【H.Imai(JRA)】

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    エルコンドルパサー EL CONDOR PASA

    1995年3月17日生 牡 黒鹿毛

    Kingmambo
    サドラーズギャル(父Sadler's Wells)
    馬主
    渡邊隆氏
    調教師
    二ノ宮敬宇(美浦)
    生産牧場
    Takashi Watanabe(米国)
    通算成績
    11戦8勝(うち海外4戦2勝)
    総収得賞金
    4億5300万800円(うち海外7692万2800円)
    主な勝ち鞍
    99サンクルー大賞(仏GⅠ)/98ジャパンC(GⅠ)/98NHKマイルC(GⅠ)/99フォワ賞(仏GⅡ)/98ニュージーランドT4歳S(GⅡ)/98共同通信杯4歳S(重賞)
    表彰歴等
    顕彰馬(14年選出)
    JRA賞受賞歴
    99年度代表馬、最優秀旧5歳以上牡馬/98最優秀旧4歳牡馬

    2015年12月号掲載

    合田直弘 NAOHIRO GODA

    1959年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学経済学部を卒業後、テレビ東京に入社。「土曜競馬中継」などの制作を担当する。88年に退社し、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。
    海外競馬に精通し、「海外競馬完全読本」などの著書(共著)があるほか、海外競馬の解説も務める。

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