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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

未来に語り継ぎたい名馬物語 08

幾度もの復活を遂げた帝王
トウカイテイオーと奇跡

河村 清明 KIYOAKI KAWAMURA

2015年10月号掲載掲載

父に続き無敗での二冠制覇を含めGⅠ4勝など記録にも残る名馬だが、度重なる故障をその都度乗り越えて復活する姿がファンの心を捉えて放さなかった。

    【H.Imai(JRA)】

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    「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」。こうしたアンケートに触れるたび、僕たちは、その馬から受け取った感動を元に評価を下す。少なくとも、僕個人はそのようにしている。

     ここに言う感動とは何か。

     それはたぶん、心に生じた「振幅の大きさ」なのだろうと思う。オグリキャップしかり、トウカイテイオーしかり、強いとわかってはいても、いろんな要因によって応援する者はハラハラさせられた。そして、尊敬できる名馬とは、そのハラハラをどこかで必ず勝利の喜びに変えてくれた。劇的に。だからこそ僕たちは深い感動に浸ることができたのである。

     こうした「与える振幅の大きな馬」は、時を経ても評価を下げない。振れ幅が大きければ大きいほど、当時の心境へと、誰もがすぐに戻ることができるからだ。だから今回、1994年の引退から早20年が過ぎての評価だったにもかかわらず、トウカイテイオーは第8位に選出された。色あせない魅力の持ち主であると、その順位は何よりはっきり証明してみせた。

     父に続く、無敗での二冠制覇。
     ダービーにおける3馬身差での圧勝。
     通算12戦9勝、GⅠ4勝という戦績。
     現役中、4度にも及ぶ故障。
     有馬記念での敗戦。
     そして364日ぶりの劇的な復活。

     テイオーの軌跡をあらためて振り返る中、何を中心に置いて書くかはずいぶん迷った。競走生活を振り返るだけなら、似た文章はいくつもある。あらためて同じ話を繰り返す必要はない。

     だから、こんなふうに考えてみたのだ。

     トウカイテイオーが僕たちに、比類なき感動を与えてくれたのは間違いない。繰り返すが、その感動は、僕らの味わった「振幅の大きさ」に由来する。テイオーが、応援する者にどうして大きな振幅をもたらしたかといえば、一つには故障の多さを指摘できる。もうダメなのか。僕たちは何度もそう思わされたのだった。

     一方で、ラストランになった有馬記念を1年ぶりで勝ったように、不屈の闘志としか表現のできない「何か」をテイオーは持っていた。だからさらに振幅は増大した。なぜああもいきなり激走できたのか。背景には何があったのだろうか。

     1993年の有馬記念で、僕たちは確かに奇跡を目撃した。あの日の奇跡を形成した要因を、今さらながらではあっても考えてみようと思う。

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