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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    どれだけの強敵が揃っても
    シンボリルドルフが一番強い

    3歳時の有馬記念では、カツラギエース、ミスターシービーらを相手に、格の違いを見せつけた  【H.Imai(JRA)】

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     3歳の最終戦として、シンボリルドルフが出走した有馬記念の時のワクワク感は今でも鮮明に覚えている。

     1つ上の三冠馬ミスターシービーとの再戦であり、デビュー以来初めて苦杯をなめさせられたカツラギエースへのリベジマッチでもあった。

     日本馬として初めてジャパンCを制したカツラギエースの逃げと、三冠馬ミスターシービーの追い込み。そして、その間で立ち回るであろう皇帝シンボリルドルフ。三強がそれぞれ自分の色を持っていた対決は、グランプリという年末の大一番をただの2分半のレースにはしなかった。週の頭、いや、もっと言えばジャパンCが終わった直後から、競馬ファンを虜にするレースとなっていた。

     しかし、結果はあまりにも呆気ないものとなる。

     馬群が最後の直線に向いた時、先頭はカツラギエースだった。そして、その後ろに迫ったシンボリルドルフの鞍上で、岡部はなんと後ろを振り返っていた。ジャパンCを逃げ切った馬がゴールまで数百㍍というところでまだ軽快に逃げているにもかかわらず、岡部は後ろに控えるミスターシービーの位置を確認していた。これはつまり、カツラギエースほどの馬でも「いつでも捉えられる」手応えを鞍上が感じていたことの証だろう。

     そして、その判断が正しかったことは直後に証明される。岡部にゴーサインを出された皇帝は、追い上げるミスターシービーを振り切り、事もなげにカツラギエースをかわす。これだけ役者の揃った舞台にもかかわらず、格の違いを見せつける競馬をしたことで、シンボリルドルフは「ついにシンザンを超える馬が現れた!!」と言わしめることになったのである。

     さらに私達はレース直前の野平と岡部の会話を知るに至り、なおさらこの馬の強さを痛感することになる。

     有馬記念のパドック。シンボリルドルフに跨った岡部に対し、野平はひと言だけ告げた。

    「借りを返してきましょう」

     これに対し、岡部も「はい」と答えたという。

     どれだけの強敵が揃っていても、彼等にとってはシンボリルドルフが一番強いと信じていた。いや、分かっていた。短いが、そういったことの分かる会話だといえるだろう。

    【H.Imai(JRA)】

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