競馬場レースイメージ
競馬場イメージ
出走馬の様子
馬の横顔イメージ

read 最新号の立ち読み

[熱戦の系譜]3歳馬vs古馬 四番勝負
天皇賞(秋)直前特集[熱戦の系譜]

3歳馬 vs 古馬
四番勝負

今年の天皇賞(秋)は、春のクラシックホースが参戦予定。
1987年に出走資格が「3歳以上」へと変更されて以降、39頭の3歳馬が歴戦の古馬を相手に盾取りへ挑んだ。
その中から今年同様に、その年のクラシックホースが参戦した、4つの激闘を振り返る。

谷川善久 Yoshihisa Tanigawa

    2022 10.30
    3歳馬 イクイノックス vs 古馬 パンサラッサ“世界を制した”逃げ馬を
    “世界を制する”末脚で

    競馬の醍醐味が詰まった
    手に汗を握るレース展開

     エフフォーリアの勝利から1年。第166回天皇賞(秋)には「今年も3歳馬がやってくれるのではないか」と期待を抱かせるメンバーが揃った。 
     まずはイクイノックス。新潟の新馬戦を6馬身差で制し、東京スポーツ杯2歳Sは上がり32秒台という衝撃の末脚で差し切り勝ち。クラシック本番は連続2着と悔し涙を流したが、皐月賞は初の小回りコース、早めに動いたぶんジオグリフから目標にされての敗戦で、日本ダービーは後方からメンバー中最速の脚を使い、勝ったドウデュースをクビ差まで追い詰めた。どちらも悲観する内容ではなく、東京の芝2000㍍は持ち味の瞬発力をもっとも生かせそうな舞台と思えた。 
     続いてジオグリフ。東京1800㍍の新馬戦が1着、札幌2歳Sでは後続を4馬身突き放し、皐月賞ではイクイノックスに完勝と、中距離戦でコンスタントにいい走りを見せている。日本ダービーは7着に敗れたものの、巻き返しも十分に考えられる戦績だ。
     皐月賞は2番人気、日本ダービーは1番人気と上位の支持を集めた逸材がダノンベルーガ。ともに4着と期待には応えられなかったが、東京2000㍍の新馬戦を鋭く差し切っていて、共同通信杯も直線大外から一閃、2着ジオグリフに1馬身半の差をつけて勝利している。展開ひとつで逆転も可能と予想されていた。
     これらと相対する古馬勢のうち、実績トップはシャフリヤール。前年の日本ダービーでエフフォーリアを下し、この年初戦のドバイシーマクラシックでは米ブリーダーズCターフ勝ち馬ユビアーも撃破していた。4歳勢にはほかに、金鯱賞と札幌記念を勝ったジャックドール、オークス馬ユーバーレーベン、小倉記念を5馬身差で圧勝したマリアエレーナが、5歳には大阪杯を制したポタジェ、ドバイターフ1着同着のパンサラッサが、6歳には新潟記念を差し切ったカラテがいた。決して低調とはいえないメンバーだが、コントレイルやグランアレグリアのようなスーパーホースが見当たらないことは確か。「今年も3歳馬」との声があがっても無理のない状況だった。
     終わってみればイクイノックスが1番人気に応えて勝利、待望のGI初制覇を飾ることになるのだが「3歳馬が古馬を破った」以上の特別な意味を持つ一戦になったといえるだろう。
     たとえばスリリングなレース展開。勢いよく飛び出したパンサラッサが、いったんノースブリッジに前へと出られたものの、ハナを奪い返してペースアップ。1000㍍通過57秒4のラップで飛ばし、15馬身以上ものリードを保って直線を向いたのだ。馬場の真ん中にジャックドール、内へ進路を取ったダノンベルーガ、大外からイクイノックス、併せ馬の形で猛然と追う3頭。最後はイクイノックスが1馬身突き抜けたのだが、その上がり3ハロンの推定タイムは32秒7、2着に粘ったパンサラッサが36秒8。実に4秒以上もの差を逆転したのである。
     もう1つ、飛躍への契機になったレースであることも忘れてはならない。
     ここは4着、続く香港Cは7着と、いずれも控える形で結果を出せなかったジャックドールは、翌年春の大阪杯ではハナを譲らぬ策で勝利をつかみ取る。怒涛の大逃げと渾身の粘りでレースを盛り上げたパンサラッサも、これが自分のスタイルと飛ばすことにこだわって、サウジCを逃げ切ってみせた。
     そしてイクイノックスはこの一戦を皮切りに、直線独走の有馬記念、世界の猛者たちを楽々と3馬身半突き放したドバイシーマクラシック、大外一気の宝塚記念、1分55秒2という大レコードを叩き出しての天皇賞(秋)連覇、ジャパンCの4馬身差完勝と、いずれも圧巻の走りでGI6連勝をマーク。獲得賞金は史上初の20億円オーバー、世界トップとなる135ポンドのレーティングも獲得と、歴史的名馬の座をつかむことになるのである。

    new 最新号発売中

    表紙

    優駿11月号 No.983

    2025.10.24発売

    天皇賞(秋)直前特集
    「秋の盾」熱戦の予感