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Bellagio Opera
ターフを彩る精鋭たち
4.6 大阪杯 阪神芝2000㍍
ベラジオオペラBellagio Operaいざ、連覇へ悔しい思いをしたダービーを糧に、昨年の大阪杯で待望のタイトルを掴んだ。
1年ぶりの勝利とレース初となる連覇をめざして今季初戦に臨む。

大恵 陽子 Yoko Oe

    届かなかったタイトルを
    ようやく手にした大阪杯

     そろそろ午後の厩舎作業が終わろうかという夕方。上村洋行調教師はスタッフと共に馬房内に入って管理馬のケアをしていた。
    「うちの先生は『情熱は抜けません』というタイプ。ほら、どこかのラーメン屋さんみたいに」
     いつだったか、厩舎スタッフが尊敬を込めてそう微笑んだことがあったが、この日も遅くまで率先して動いていた。セリなどでどんなに忙しくとも、水曜日は必ず朝一番から調教にも騎乗する。攻め馬専門の調教助手と変わらぬ1日3頭の騎乗をこなす中の1頭が、厩舎初の重賞制覇とGⅠ制覇をもたらしたベラジオオペラだ。レースが数週間後に近づくと、水曜日の開場一番のCウッドコースに白帽の上村調教師と共に入場してくる姿はすっかりおなじみの光景となった。
    「とにかくレースセンスが良くて賢くて、ポテンシャルが高いです」
     その背で日々、上村調教師はそう感じているという。それが最も発揮されたのが昨年の大阪杯だった。
     枠順が出た時、横山和生騎手は「先行して前で競馬をしたい」と話した。上村調教師も胸中は同じ。メンバーと枠の並びを見ると、ペースは遅くなりそうな気配があったことがその考えをより強くした。
     スタートが速い同馬は、望むポジションを自在に取ることができる。
    「ゲートの中で余計なことをしなくて、じっと開くのを待っているんです」
     その通りに大阪杯でも抜群のスタートを切ったベラジオオペラは、迷わず2番手の外を取った。
     ややゆったりしたペースで、前半1000㍍1分0秒2と表示される直前、ローシャムパークが早めに外から並びかけてきたが、全く動じなかった。
    「あの形になると力んでしまう馬も多いんですけど、賢いので問題ありませんでした。操縦性の高さです」
     内回りコースから約350㍍の直線に入ると、なお余力のあったベラジオオペラは逃げ馬を捉え、必死に追い上げる後続をクビ差しのいでタイトルを手にした。
     前年の日本ダービーは僅差の4着。あの時、届きかけたGⅠをようやく掴んだ。
     続く宝塚記念は一旦は先頭に立とうかという場面もあったが、さらに外からブローザホーンが道悪を苦にせず伸びてきて3着。レース中に大雨が降る厳しい条件となりながら、力を見せた。
     惜しい一戦だったが、直前には嬉しい出来事もあった。栗東で2週続けて同馬と併せ馬の追い切りを行ったのち北海道に移動したサヴァが、1年3カ月ぶりに勝利を手にしたのだ。
    「オペラと併せ馬をすると、走るんですよ」
     上村調教師は嬉しそうに話す。GⅠ連勝こそならなかったが、名実ともに厩舎を牽引する馬となっていたのだ。

    暑さ対策には難しさも
    絶好の季節を味方に

     ところが、その後は苦手な暑さに苦しめられた。前年も状態が上向いてこず菊花賞を回避したように、暑さに弱いと分かっていたため、夏は休養に充てたが、誤算だったのは残暑が非常に長引いたこと。汗をかかず、体内に熱がこもってしまうベラジオオペラにとって辛い日々が続いた。
     それでも、涼しくなる日を手をこまねいて待っていたわけではなかった。帰厩に先立ち昨夏、常温の水を冷やして冷水シャワーを浴びせられる装置を導入。暑い時期は調教後の上がり運動を10分短縮し、その分、馬体を冷やす時間を取った。JRAの研究でも熱中症対策として上がり運動の時間を長く取るよりも、馬体をしっかり冷やす方が重要だと判明している。
     そうした対策を講じても、難しかったのが昨年の酷暑。秋初戦となった天皇賞(秋)で「いい頃に比べると覇気が足りない」とコメントしたことは、ファンに嘘偽りなく感触を伝えたもの。追い切りの動きも迫力に欠けた。それでもレースでは直線で先頭を捉えようかという脚。状態を考えると、6着という数字以上に強さを感じさせるレースだった。ようやく寒くなり、状態が上向いた有馬記念では立ち回りの巧さを生かして2500㍍でも4着。
    「トリッキーなコースですし、スタートが速いので何とか克服できないかなと思っていました。最後は止まってはいないですし、4着まで辛抱しているので、決して距離が長いというわけではないかなと思いました」
     そうなると、暑くなる前のこの季節、GⅠ昇格後初となる大阪杯連覇に期待がかかる。その背で上村調教師はいま、こう感じている。
    「ずっとこの馬に関しては『緩い』と言ってきましたが、デビュー当初から比べると随分としっかりしてきました。まだ良くなる余地もあるのかなという思いと、年齢を考えるとこういうタイプなのかなという思いもあります」
     年末に有馬記念を使ったため、「1戦挟むより直行した方がフレッシュな状態でいいのでは」と本番に直行する。
    「いい状態で帰厩できそうです」
     暑くなるにはまだ早い。スタートとレースセンスの良さを生かせる大阪杯の舞台が、桜とともに待っている。

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    表紙

    優駿4月号 No.976

    2025.03.25発売

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